選りすぐりの蓄電池
環境問題が人類の大きな課題となりはじめている中、基本的な対策の一つに環境教育がある。
学校教育と社会教育の双方の分野での環境教育である。
しかし、環境問題の分野は非常に幅の広いもので、全体像を把握することが難しい。
長い歴史を経た公害問題、人と自然との共生を求める自然保護の問題、ゴミの問題、さらに地球環境問題と果てしなく広がっていく。
学校でも企業や一般社会でも、こうした幅の広い環境問題を統一的に伝える試みができていない。
それぞれの分野の講座はあるが、環境問題の本質的な課題や範囲などについては明確になっていない。
そのため、学習するほうは環境問題についてぼんやりとした定義をもつだけで、何となく腰が定まらないような気持ちで環境問題をとらえることになる。
「人」は複雑で多様な機能をもち、さらにその機能を向上させる限りない可能性をも有している。
企業経営の根幹は人材育成にあり。
これは経営者としての実感である。
企業経営と同様、私は環境問題の解決には資金や技術にも増して、環境問題の分野で活躍できる人材の育成が重要であり、またわれわれ一人ひとりが環境に配慮する意識をもつことが大切である。
かつて、わが国では公害問題が大きな社会問題として取り上げられた。
ここで取り上げる地球温暖化問題は地球規模の環境問題の一つで、地域的あるいは局所的な環境問題であった公害問題とは異なる面がいくつかある。
まず影響範囲の違いが挙げられる。
公害問題の影響は比較的局所に限定されたものであったが、地球環境問題はその言葉が示すように影響が全球的に及ぶものである。
したがって、問題解決を図るにも一つの企業、一つの国で行えるものではなく、国際的に協調して対処しなければならない問題である。
次に、公害問題では人間にとって直接害を及ぼす物質の排出が問題であって、その排出を制御することで問題の解決を図った。
一方、地球温暖化などで問題となっている物質は人間に直接的な害は何も及ぼさないものである。
人命にかかわるものであれば問題解決のための国際的な協力体制も素早く立てられやすいが、緩慢でしかし長期的に影響を及ぼしつづける問題をいかに解決していくかは全世界に対して突きつけられた新たな問題である。
さらに両者の違いを挙げるならば、公害問題はその被害が現れてから対応を迫られた問題であるのに反して、地球温暖化の問題は以下に紹介するように科学がその発生を予測していた問題であったことである。
現在は科学の予測結果に基づいて国際的な対応・対策をとろうという段階に進んできており、その点では地球温暖化は科学の成果が理想的に活かされようとしている問題といえる。
しかし、対応すること自体が世界の経済にさまざまな影響を与えかねない非常に困難な問題であるために、いまだ2000年以降の具体的な方策について世界的な合意の方向がふえない状態にある。
1997年12月には京都において気候変動枠組条約第3回締約国会合が開催され、そこで2000年以降の対応について何らかの方向性を明確にしようということが目指されている。
ここではこの地球温暖化問題についてその科学的な根拠、科学に基づく予測、科学の問題点などを紹介する。
重く受けとめてのことだった。
地球温暖化ということについて科学者から最初の警告が発せられたのは1896年のことである。
スウェーデンの化学者S・Aは産業革命後の化石燃料使用量の増大によって大気中の二酸化炭素濃度が増大し、その温室効果によって温暖化が生ずることを警告している。
しかし地球温暖化に関する研究はこれによってすぐ活発に行われるようになったわけではない。
それには約60年を要した。
1958年には米国のキーリングがハワイ島のマウナロアで大気の二酸化炭素濃度監視を開始した。
また同じ頃、スウェーデンのPは恩師のRPの勧めにより、気象力学から炭素循環へと研究テーマの大転換を図った。
大気中の二酸化炭素濃度変化を理解し将来の予測をするためには、まず濃度の測定を実施すること、そして地球上での炭素循環の実態を解明する必要があったからである。
二人とも60年前にAの発した警告をそれからおよそ十年後、1967年に真鍋淑郎とウェザラルドは大気中の二酸化炭素濃度が二倍になったとき地上の気温がおよそニ.3度上昇すると見積もった。
真鍋は地球の気候を物理法則を用いて再現する「気候モデル」開発に取り組んでおり、そのための手始めとして大気組成を与えて大気中の放射加熱・冷却率を正しく計算するための放射モデルの開発を行った。
さらに対流運動によってエネルギーが上下に輸送される効果も加えたモデルをつくり、そのモデルが現実に観測されている気温の分布を精度よく再現できるかどうかの実験を行い、満足のいく結果を得た。
その応用問題として彼らはその同じモデルをAの警告していた問題に適用し、物理法則に立脚した気候モデルに基づいて気温の変化の見積もりを世界で初めて示すこととなった。
その後、気象学の世界では真鍋をはじめとする研究者たちがより現実的な地球の気候を再現できる気候モデル地球温暖化の問題は、科学が予告する結果がわれわれの地球環境に徐灸にではあるが重大な影響を及ぼす問題であり、単に科学の世界の中で研究しているだけではすまないという一面を有している。
科学の最新の成果を政策決定に素早く反映させていく必要がある。
そのために、1988年には「気候変動に関する政府間パネル(IPCC)」という組織が、国連の専門機関である世界気象機関(WMO)と国連環境計画(UNEP)によって設立された。
IPCCの初代議長は1950年代に炭素循環の研究を開始したP博士で、1990年にはIPCC第一次報告書をとりまとめた。
この報告書は1992年の国連環境開発会議(地球サミット)において締結された「気候変動に関する国際連合枠組条約(FCCCとの原動力となった。
1995年にはIPCC第二次報告書が出され、2000年には第3次報告書をとりまとめることが決まっている。
地球の気候の決定に関与する全体を気候システムと呼んでいるが、これは大気、海洋、陸面、雪氷、生物圏からなっている。
その中では単に物理過程のみならず、生物・化学がからむ過程も重要な役割を果たしており、それらに関する本格的なモデル開発はこれから始まろうという段階である。
モデルはまだ改良・開発すべき点を多く残しているものの、現在の気候モデルは現在までに観測されている気候を基本的に再現できていて、モデル結果に対する信頼は着実に深まっている。
地球温暖化の原因は二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素やハロヵーポン(塩素、臭素、フッ素等のハロゲン元素と炭素と水素との化合物で、フロンやハロンなどがある)といった温室効果気体が人間活動の結果、大気中で増加していることにある。
これらの気体の増加は石油や石炭、天然ガスなどの使用量の増加や土地利用の変化と関係している。
まずこれらの気体の中で最も注目されている二酸化炭素についてみてみよう。
二酸化炭素の大気中濃度の最近千年間で変化している。
濃度を表すppmvは体積比100万分の1を単位としたものである。
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